知る人ぞしるゲームシナリオライターの打越氏、多くのノベル・アドベンチャーゲームを手掛けているがクセが強い。
多くのゲームというのは基本的に「成長感」を演出することでプレイヤーを惹き付ける作りになっていると思っています。
簡単に言うと、成長感⇒優越感⇒多幸感というルート
・シューティングゲーム、音ゲーならプレイヤー自身に「上手くなっている実感」を与える
・RPGならレベルやステータスという数値
・4XやRTSなどのストラテジーはマクロ的には前者、ミクロ的には後者のハイブリット
・恋愛ゲームは成長感自体は少ないが、(現実の自分との差による)優越感・達成感
ちなみにギャンブルも同じ仕組みで
成長感(資金の短期的増加)⇒優越感(負けている他人、過去の自分との差)⇒多幸感
このあたりはクリエイターの方なら意識的、無意識的に理解して作品を作っている。
Vampire Survivorsが売れた理由はまさにここを突き詰めたのが大きな要因ですし、過度に射幸心を煽るガチャ文化が根付いてしまったのもやはりこれ。
ただ、「ノベル・アドベンチャー(または小説・漫画・アニメ・映画)」というジャンルは少し特殊で、プレイヤー自身はプレイ中に成長するわけではない。
(基本的に)成長感を与えるわけではなく、代わりに「感銘を与えてプレイヤーを惹き付ける」。
・登場人物の喪失感で感動させる手法(麻枝准氏などが有名)
・投身させたキャラクターに成長感を味合わせる(なろう系小説など)
・関心させるギミックによるカタルシス(今回扱う打越鋼太郎氏など)
これらの中で、「ギミックによるカタルシス」というのは圧倒的に少数派で、その理由としては「作るのが大変」であり「対象となる人が少数(ニッチ)」というもの。
それでもアニメになって人気が爆発した「シュタインズゲート」「ひぐらしのなく頃に」の例もありますし、きちんとメディア露出すれば一定の支持を得れるジャンルだとは思います。
打越氏はずっと「ギミックストーリー」というジャンルを描き続けてきてるクリエイター。
なぜ今回この話題かというと、最近やっと『AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』をプレイしたので。
当作品をプレイすると、関心すると同時にギミック物を強制された筆者の「生みの苦しみ」を感じざるを得ない。
ほんと大変だよね。
でもがんばってほしい(笑)
紹介する前に一言ことわっておきます。
今回のブログ記事では物語のネタバレは極力避けますが、多少は発生してしまいます。
まっさらな状態でのプレイ体験を損なう可能性はありますのでご注意下さい
まったくネタバレなしで紹介するのは無理だと感じました…
Infinityシリーズ
ゲームとしては純粋なノベルゲーム。
選択肢により分岐するが、Ever17とRemember11は大きくはエンディングへは1本道で小説を読んでいる感覚に近い。
元は『ループ物』を軸として作られた。
ゲームでないと作れない「メタフィクションループ物」というジャンルを日本に作ったのは打越氏かもしれない。
シリーズ物ではあるが、各作品に繋がりはない(覚えている限り)。
Never7 -the end of infinity-
主人公「石原 誠」は最悪の目覚めを迎えた。それは…『目の前で女の子が非業の死を遂げる夢』
ゼミ合宿のために、とある南海の孤島に来ていた主人公。平凡という名の幸福の中で合宿は無事終了する……はずだった。
運命の日…4月6日。
その日「不安」は「絶望」へと、「予感」は「惨劇」へと姿を変えた。
永遠に迎えられない7日目の朝。残された記憶を頼りに悲劇を回避した時、『全ての謎』が明らかにされる。
(ストアページより抜粋)
孤島からの『脱出&ループ物』なのだが、(低コストで作成できるノベルゲームとして)当時流行っていたギャルゲーにかなり寄せた作りになっている。
ギャルゲーにありがちな〇〇(キャラ名)シナリオというシナリオ区分がされている。
「ToHeart(1998年)」「ONE(1998年)」「KANON(1999年)」なので2000年発売の本作はそういう時代だったんだなと。
世界的にはバック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年)から世界的に時間を扱う作品というのは爆発的に増えてきていたが、日本ではまだまだ未開拓のジャンルだったと思われる。
本作品をオススメできるかというと…かなり厳しいw
とにかく古い作品ですし、ギャルゲー層には小難しすぎるし、ギミック好き層には古代ギャルゲー部分がネックに。
やっぱり「キャラ毎に個別シナリオを作らないといけない」というのはクリエイターにとって大きなネックになっていた気がする。
Ever 17 – The Out of Infinity
どこにでもいそうな大学生、倉成武が訪れたのは海中にあるテーマパーク「レミュウ」。
武はそこで発生したとある事故に巻き込まれレミュウに閉じ込められてしまう。
救援は絶望的な中、武は謎の少女「つぐみ」や案内員の「優」達と共に地上へと脱出する方法を求めてレミュウを彷徨う。
青く神秘の海底に沈んだ夢と希望のテーマパーク。
そこにまだ夢と希望は残っているのだろうか?
それとも何か別の謎があるのだろうか。
次々と起こる危機を乗り越え、脱出方法を探せ!
(ストアページより抜粋)
一部では打越氏の最高傑作との声も多い。
ギャルゲー的な〇〇ルートは踏襲されているが、あくまでメインルートへのサイドストーリーとしての役割が強化され、全体としては1つの大きなストーリーに。
ただ、ギャルゲー部分/ギミックストーリー部分両方を楽しめないと厳しいのは変わらず。
せっかくSTEAM版をだしたのだから体験版があればよかったと思う。
ちなみに終盤のまとめ部分はかなり力業を感じてそこまで絶賛はできなかった(あくまで個人の…)。
ただヒロインの一人、田中優を絡めたギミックは素晴らしく自分が打越氏のシナリオが好きになった元凶でもある(笑)
Remember11
幻の最高傑作。
筆者はPS2でプレイしましたが、IOS/androidは現在販売停止?
あれ、もしかして現行でまともに遊べるプラットフォームがない可能性も…もったいない。
「雪山遭難」「飛行機事故」「過去と未来」「人格転移」「疑心暗鬼」「姿無き殺人鬼」「多重人格」
さっと思い浮かんだキーワードだけ書き出してもミステリアスで魅力的な単語が沢山出てくるシナリオ、それを上手に盛り込んだストーリーと読者を引き込むテキストを持っている作品。
ただし、未完成
ギャルゲー要素はなくなり、主人公二人(冬川こころと優希堂悟)が入れ替わりながら雪山遭難と閉鎖空間ミステリを同時に進めて行く、というこの手のジャンルてんこ盛り感。
初速がすごくて一気に引き込まれた人も多いはず。
打越氏らしいギミック要素はあるものの、解明編がないので評価できなかった。
敢えて未完成(ED後の考察を楽しんでもらう)という説もあるようだが、やっぱりゲームとして完成していてほしかった。
今後STEAM早期アクセス&クラファンとかに望みを繋げたいが、考察サイトとかでかなり解明が進んでいるので今更完成品(後追い)みたいなのはかなり厳しいかもしれない。
こういうギミック物をあまり時間を置いて出すのはやっぱり難しいですよね。
そう考えると「ひぐらしのなく頃に」で読者への挑戦(出題編/回答編で年単位でスパンを空ける)をやってのけた竜騎士07氏の頭と心臓が化け物すぎる…
12RIVEN
原案だけ?
内容はすごく薄かった記憶しかないので割愛。
もう(多分)入手できないですし。
INFINITYシリーズは3部作ということで。
極限脱出シリーズ(2009年)
脱出ゲーム×トンデモ科学ノベルアドベンチャー
ゲーム部分とノベル部分のバランスが良く、これから打越作品に触る方にも試金石としてオススメできる。
ただし、脱出パートは割と頭を使うパズルゲームでゲームとしての比重も大きいため、パズルパートが楽しめないのであれば手を出すべきではない。
一応パズルパートはパートナー任せでもクリアできるが、そこをスキップして物語を進めて楽しめるかというと疑問。
3作品はストーリーが繋がっており、登場人物の被りも多いためプレイするなら1作目の『9時間9人9の扉』から。
ギミックに関してはINFINITYシリーズよりは分かりやすい。
「9時間9人9の扉」⇒「善人シボウデス」⇒「刻のジレンマ」とプレイするしかないのだが、個人的には「善人シボウデス」が名作だったと思う。
9時間9人9の扉
STEAMでは「Zero Escape: The Nonary Games」というバンドルで2作目の「善人シボウデス」と同梱されている。
船の船室で目覚めた主人公。
なんとか船室を抜けると同じ状況の8人と合流。
「このゲームはノナリーゲーム。制限時間は9時間。9の扉を開けて船から脱出せよ」
主人公は主催者の用意したゲームに否応なく巻き込まれていく。
元々はニンテンドーDSのタッチペンで操作するためのゲームシステムだったが、PC版でもゲーム性は問題なし。
シリーズを通してパズルパートは程よい難易度で、大多数のプレイヤーが自力でクリアできるようになっている。
ストーリーは単なる脱出ものかと思いきや、終盤は完全にストーリー重視のノベル作品に。
セール時はかなり安く買えるのにボイスありで楽しめるのは〇
いかにもデスゲームな舞台設定ではあるが、わりとみんな仲良く進めて行くのでデスゲーム感は薄め。
善人シボウデス
前作と同じく、密室で始まる脱出パズル。
とある施設に集められた9人で、やはり始まるノナリーゲーム(アンビデックスエディション)。
ここがどこなのか?
主催者ゼロの真意とは?
凶悪なウィルス、ラジカル6とは?
様々な謎が交錯しながらもゲームは進行していく
主人公は交代しているが、ある程度前作との繋がりはある。
本作の魅力はストーリーで、中盤以降かなり惹きこまれるつくり。
デスゲーム要素はやはり少なめ。
シリーズでも屈指の「ネタバレ厳禁」なシナリオなので、できるだけ事前情報ナシでプレイした方が楽しめる。
個人的には今回紹介する作品で最も楽しめた。
一番の不満点は無駄に時間のかかる移動演出で、リマスター時にここをカットできるようにできなかったのか。
前作に引き続きパズル要素は適度な難易度で面白かった。
やはりパズル部分が楽しめないとキツイゲーム。
刻のジレンマ(Zero Escape: Zero Time Dilemma)
極限脱出シリーズ3作目(最終作?)
基本的には「9時間9人9の扉」「善人シボウデス」をクリアした人向けの作品で、前作をやってるとニヤリとできる場面もある。
明確な主人公はおらず、一応「シグマ」が主人公ポジションではあるが場面転換も多いので群像劇風味。
キャラクターがフルボイスなのと、アニメーション強化によりプレイヤーが入り込みやすくなった。
序盤、キャラクターが死にまくって正解のルートを探すというメタフィクション的な側面が強い。
シリーズでも屈指の血なまぐさい描写が多い作品なのでグロ苦手な人は注意。
スキップしちゃっても問題はないが描写箇所はかなり多い。
トンデモ科学部分が多く、ツッコミ要素が多いがそこはあまり考えないこと、それが本作品を楽しむ秘訣。
EDは賛否ありそうだけど、余韻があってかなり好きな終わり方。
悪役がただの悪役で終わってない、理想の悪役の一人。
あとダイアナルートはとても良かった。
AI: ソムニウム ファイルシリーズ
AIのアイボゥを片腕とした事件捜査と、Psync(シンク)システムによる対象の内面操作(ソムニウムパート)を特徴とした犯罪捜査シリーズ。
初出が2019年ということで、UIやインタラクティブ性がかなり現代寄りになった。
当然キャラもフルボイスで(アドベンチャーゲームにしては)ぬるぬる動く。
ただし、捜査パートは基本的に総当たりなので誰でも解けるがカタルシスはない。
ソムニウムパートはパズルと言えなくはないが、因果が分かりづらいので結局は総当たり&覚えゲーになっておりゲーム性は極限脱出シリーズよりかなり落ちている。
ということで、本作は見た目はパズル&アドベンチャーだが、実質はノベルゲームに近い点は注意。
AI: ソムニウム ファイル
トレイラーを見てわかる通り、グラフィック面がかなり強化されている。
ゲーム性が落ちてしまっているのは残念だし、Psync(シンク)システムは覚えゲーなので素直に褒めきれない部分はあるが、本作はストーリーがかなり良くプレイヤーは惹きこまれるだろう。
終盤に明らかにされる真相は多くのプレイヤ―からすると意外なものになる。
本作品のヒロイン「イリス」の作中の使い方が秀逸。
やはりというかトンデモ科学はあるのだが、過去シリーズの中では最もリアリティを感じさせるものになっていた(ように思える)。
本作品にも難点はあり、それは「戦闘描写がひどすぎる」という点。
作中で何回か対集団戦があるのだが本当にひどい…
わざとギャグとして書いているのかもしれないですが、シリアスなシーンにギャグいれたらアカンと思います(笑)
AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ
ストーリートレーラーがあまりに微妙だったので、キャラクタートレーラーの方で…
前作後、今度はHB(ハーフボディ)事件が発生し、前作ヒロインの一人「みずき」を中心として事件解決に動く。

前作を持っていたら、セール時1000円程度。
これで20時間くらい遊べるのだからコスパはいいはずなのだが…

映像面は進化してる
クリア後感想
・WinkPsync(ウィンクシンク)という謎システム
本作よりアイボウに搭載されて、見てる人の短期記憶を読み取れる謎システム。
限定的とはいえ見た瞬間相手の属性(善悪)が分かるのは推理モノとしてどうなんでしょう。
・W主人公(?)の一人「龍木」の扱いがひどい。
序盤はほぼこの人を操作することになるのにこの扱い。タマはエロイけれど。
・戦闘シーンは相変わらずひどい
なのにみずき主人公の所為でバトルシーンが多い
・ラストがすっきりしない
プレイした人ならみんな感じると思う
先にギミックを考えて、後からストーリーを付けたのでしょう。
映像は前作より進化してた。
伊達さんの顔が戻ったのは(大人の事情で)納得ではあるけれど、前作時点で次回作を作る予定ではなかったのが透けて見える。
ギミック物はただでさえ作るのが難しいのに、既存キャラを強制されるとライターさんにとってかなり縛りがきついと感じました。
伊達鍵は眠らない – From AI:ソムニウムファイル
ネットアイドル・イリスが宇宙人にさらわれた!?
謎のUFOに連れ去られたイリスは、奇想天外な脱出ゲームをするはめに。こんな状況でも頼れる人物はただ1人──それは、Psyncer 伊達 鍵!
伊達は脱出ゲームの謎解きに協力しながらイリスの捜索を進め、その中で発見された、とある重要参考人の夢の中へPsyncする。『The Third Eye Game』とは何なのか…その謎を解き明かし、イリスを助け出せ!
(ストアページより抜粋)
時間軸としては1作目と2作目の間。
本作は身内ネタが多く、1作目をプレイした人へのファンゲームという位置づけ。
シリアスよりコメディ寄りの話が多いので、1作目をさらにコメディ寄りにして楽しめそうであればオススメできる。
個人的にはシリアスの方が好きなので本作は評価は低め。
ただ、今作は極限脱出シリーズのような脱出パートもある。
オススメは?
「AI: ソムニウム ファイル」が最も入りやすく、ギミック物の試金石として優秀。
「ニルヴァーナ イニシアチブ」はやらなくても良い。
極限脱出3部作はパズルが嫌いでなく、(ニンテンドーDSレベルの)古い演出が許容できるならオススメできる。
INFINITYシリーズでは現実的にEver17一択。
Remember11が好みだけど、さすがに未完品を人にはオススメしづらい。
他作品に比べると(古めの)ギャルゲー感が強く、真相解明までかなり長いので時間のある時に一気に読み込むのがよい。
全体として、トンデモ科学を取り入れたミステリーなので、真面目に考察するのではなくありのまま受け取る姿勢で読むのがいいでしょう。
シュタインズゲートの電話レンジが許容できるなら問題なし。
個人的にはそろそろAIソムニウムは一旦閉めて、新シリーズを作ってほしい。
ちなみに今回の記事は「AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」の記事を書こうとしたら、ネタバレなしだと紹介できないことに気づいて打越さんの記事を作成しました(笑)

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