ゲームというより文学であり、心のありように問いかける作品
『ヒヒル(風爛病=ふうらんびょう)』という架空の病気を扱い、ある日身近な人がそうなってしまったら…
ということを題材にしている。
『ヒヒル』になった患者は、固体差はあるもののゾンビのような容貌になり、認知症のような症状を発症する。
そして進行の上下はあるものの完治はできない。
評価
総合:
本作の企画・シナリオを手掛けるのは瀬戸口廉也氏で、(主に大人向け)ノベルゲームでは人ぞ知る方。
正直、「瀬戸口氏の作風に迎合できるか否か?」が本作品の評価の多くを占めていると思います。
全体的にエンタメ色が低く、リアリティのある精神的な怖さを表現するのに長けた作品が多い。
文章は長文が多めでお世辞にも読みやすいとは言えませんが、読者に「刺さる」シナリオに魅了された人も多いはず。
私は『SWAN SONG』というアポカリプス世界を題材にしたノベルゲームで知りました。
『キラ☆キラ』は氏の作品の中では珍しくエンタメ色が強いので入りやすいかも。
本作のキーとなる病気「ヒヒル」に関しては、ホラー小説の『屍鬼』(著:小野不由美 のちにアニメ化もされた)に登場する「起き上がり」を想起させる。
ただ、『屍鬼』は(ホラー作品として)エンタメ色がありましたが、本作は「ヒヒルがいる世界」という大きな風呂敷の中の登場人物の感情にフォーカスをあてたドキュメンタリー的な作品となっている。
「ヒヒル」に関しては、現実の世界でいうと認知症に近く、おそらくモチーフにしている。
直接的に扱うと差しさわりがあるので、架空の「ヒヒル」という病気にしてゲームとしての体裁を整えているのだと思うけれど成功しているかは怪しい。
結論として、ゲームとしてオススメはしづらいが多くの人に読んでほしい作品。
特に高齢者の方と同居している方はプレイしてみるといいでしょう。
・高いリアリティ
・現実の病気に対しての心の持ち方を考えさせれられる社会性
・読み終わった後に考え方が変わる可能性
時代は架空の大正時代。
そこまで当時の世相とかを反映しているわけではなく、あくまで舞台装置として。
架空の話ですが、リアリティに極振りしてます。
世界感はしっかりしていますが、ストーリー自体は小さくシンプルな構成。
・舞台背景の解説部分(導入)が非常に長い(導入部で楽しませる気がない)
・販売戦略が弱い(大体パブリッシャーの所為)
・長文が多く、ゲーム世代に合わない
・短い
■導入部が長い、販売戦略が弱い
千種正光(ちぐさまさみつ):風爛病の医者
天間武雄(てんまたけお):エリート学生
のW主人公を元に語られる世界感なのですが、長文で語られる冗長な世界観の上にいきなり二人の視点での解説になるためとにかく冗長。
ちなみに導入部に関しては体験版が用意されていますが、面白さを伝えきれてるとは言い難い。
物語は中盤で2段階のギミックが用意されているんですが、体験版ではその惹き付ける部分までは入っていない。
売る気ある?
正直体験版部分だけでは、まったく購買層に問いかけが足りていないと言わざるを得ない。
体験版はせめてもう少し中盤の読者を惹き付けるイベントまで入れて欲しかった。
■長文が多い、ボリュームに対する価格設定がやや割高
地の文、セリフどちらも長文が多いのもゲーム世代には厳しい。
文章が長いのである程度時間はかかるが、ストーリーとしては短い。
ただし、体験としては充分なものを提供できている。
最後に
ゲームというより、一種のドキュメンタリー作品に近いので、プレイした人の考え方に影響を与えるかもしれない作品。
千種の途中のとあるイベントには目頭が熱くなりましたし、天間のEDは良い。
登場人物が基本的に善人というのも、今作に関しては救い。
ヒヒルの世界感が悪意に満ちている代わりか、人のエグさというのはあまりありません。
ただ元々のボリュームがない所為もあるけど、体験版の構成が悪手すぎてネテロ会長もビックリ。
これなら体験版は天間パートだけの物語構成にして、中盤のイベントまでやってほしかった。
個人的には、久々に瀬戸口氏のノベルをしてみて、やっぱり氏の感性は普通と違うと感じました。
実は同時に「BLACK SHEEP TOWN」も購入したのでそのうちプレイしてみよう。
2連続でノベルをやったので、ちょっと普通のゲームを挟みたいけれど。
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